はじめに
天候デリバティブとは天候の影響による農業生産の減少や財政支出の増大に備える金融商品です。気温・降水量・風速などの一定の指標を定めて、その間の指標が一定の条件を満たした場合には損害の有無にかかわらず所定の金額を受け取ることができる仕組みになっています。
近年は地球温暖化の影響からなのか、ゲリラ豪雨や猛暑さらに少雪などの気候変動が出てきています。この気候変動は農業・漁業・小売・飲食などの食品を扱う業界では看過できない問題になっています。
この天候の影響で会社・業界によっては思わぬ利益や痛い損害を受けることもあります。天候の変動も経営者によっては無視できません。このような天候のリスクを少しでも回避していくのが天候デリバティブという商品です。
なお天候デリバティブは法人・個人事業主の方の天候のリスクに対応した金融商品となっています。よって個人の方は契約をできません。
損害保険なのか?
天候デリバティブの性質としては損害保険に似ています。前もっての保険料を支払っておくことで気温や降水量などの値が平年と大きく異なる数値になることで保険料の何倍かの保険金が返ってくるということです。このような状態になってしまうと当該会社には大きな損害が出てもおかしくないということでその部分を補償していくという性質になっています。
この天候デリバティブというものは損害を受けたかどうかは関係なく、ある一定の天候になった時には保険金を受け取ることができるという点で他の損害保険とは異なる性質を持っています。煩雑な要件や手続きも不要なので利用がしやすいというメリットがあります。種類の多様化なども考えていくようなので今後はさらに人気の出る金融商品になって来そうです。
メリット
天候デリバティブのメリットは次のようなところがあります。
天候の大きな変動があった時でも保険金を受け取ることができるので本業の面での損失をカバーすることができる。
損害の有無に関係なく補償金を受け取ることができる。
企業ごとのオーダーメイドで柔軟な商品を作ることができる。
自社でのマネジメントの姿勢を対外にアピールをすることができる。
想定外の悪天候になると損害の有無に関係なく保険金を受け取ることができるという点で大きなメリットがあります。
デメリット
一方天候デリバティブにもデメリットがいくつかあります。
契約時にオプションでの保険料を支払う必要がある。
逆に要件を満たさなければ大きな実損害があっても補償されない。その要件を満たすということがなかなか簡単ではない。
要件を満たしたとしても、その条件の満たし具合が他社との相対評価になる、よって条件を満たしたとしても契約通りの補償を得ることができるかどうかは分からない。
天候の要件を満たしても必ずしも意図した補償を得られない可能性があるという点はリスクになりそうです。
性質
天候デリバティブの例を東京ディズニーランドを参考にして紹介します。屋外の娯楽施設では雨が降ってしまうとお客様の集客に大きな影響が出ます。雨の日をなるだけ少なくしたい。想定よりも雨が多く降ってしまった場合には補償を得たいという企業側の目的があります。
要件を観測期間(土日祝のみ)・観測所(浦安)・支払い条件(1日に1ミリ以上の降水日数)・降水日数が50日を超えた場合に1日当たり500万円・最大支払額1億円・オプション料1500万円とします。
その要件を満たす日が年間58日あると仮定するとディズニーランドは500万円×(58日-50日)-1500万円=2500万円ということになります。
たとえ集客減などで損害が2500万円を超えたとしても2500万円までが補償対象になります。また集客が増えて売上が伸びてもこの2500万円を受け取ることができるという点が魅力的ともいえます。
注意点
天候デリバティブにもいくつかの注意点があります。
保険の範囲での全額補償の対象にはなりません。
取引の妥当性やメリット・デメリットを総合的に勘案して行うべきかを検討する必要があります。
受け取るべき補償額が天候や契約している他社との間の相互作用で決まります。
各社によって契約によるメリット・デメリットがあるので他社のデータがあまり参考になりません。
会計士や税理士への報告が必要になります。
台風・洪水・さらには大雪などによる自然災害が基本になります。地震や火災などの大災害には適用されません。