船舶修繕者賠償責任保険加入のメリットと注意点

はじめに

船舶修繕者賠償責任保険は船舶の修繕工事の期間中に起こった船舶・積荷・第三者の財物の損壊もしくは修繕工事の不良などによって修繕工事終了後に起こった船舶や積荷の損壊に対して船舶の修繕者が法律上の損害賠償責任を負います。その損害賠償を填補していくのがこの保険になります。主に造船所が船舶所有者に対して修繕ミスの責任を負います。

補償内容

船舶修繕者賠償責任保険の補償内容は以下のようになります。

船舶の修繕工事中に対象の船舶又は積荷に与えた損害
修繕工事の不良によって対象船舶または積荷に生じた損害
修繕工事のミスによって生じた対象船舶及び積荷以外の財物への損害

船舶の修繕工事の施工ミスなどによって起きた損害に対しての補償というところが基本になります。

損害は対象船舶の修繕工事の始期から修繕工事の完了後の60日以内までに発見をした場合に限ります。工事終了後3か月などのように期間を超えた場合に発見をしても損害に対しての補償はありません。

保険の地理的な範囲は陸上もしくは海上の危険によって船舶や修繕材料に生じた損害を賠償していきます。

補償の対象外

以下のような場合では船舶修繕者賠償責任保険の対象になりません。

排水・排気または埃の発生
地震・火災及びそこからの津波や土砂崩れなどの災害
盗難もしくは紛失
その他の約款上の免責事由

契約形式

船舶修繕者賠償責任保険は年間の総修繕船を対象とする包括契約・包括契約のてん補限度額を超える場合の超過個別契約・個々の修繕船を対象とする個別契約の3つになります。

年間の総修繕船を対象とする包括契約は年間に修繕工事を行うすべての船舶が対象になります。保険料の支払い方式は暫定保険料方式と確定保険料方式のどちらかを選ぶ必要があります。

暫定保険料方式は修繕工事の修繕工事見積額に基づき決定した暫定保険料を先に払います。後に実際の修繕工事費に基づき決定した確定保険料との差額を払うことになります。修繕した船はすべて申告することが条件になります。

確定保険料方式は契約時に保険期間の開始時点で確定している船舶修繕工事に関わる売上高を保険期間中の修繕工事費とみなして保険料を支払います。この場合は確定保険料の支払いは必要ありません。

包括契約のてん補限度額を超える場合の超過個別契約は包括契約の契約者が対象となる船舶のうちで特定の船舶については包括契約の填補の限度額を超える額を希望する際には上乗せで別途追加で契約をしていきます。

個々の修繕船を対象とする個別契約は個々の修繕船ごとに契約をしていく手法になります。

また修繕工事を行う責任者の造船所が契約者及び被保険者になります。

注意点

船舶修繕者賠償責任保険には航路定限というものがあります。航路定限とは造船所から15海里以内の水域を含む造船所構内になります。試運転の場合は自航から100海里以内・被曳の場合は25海里以内になります。この航路定限を上限に船舶の稼働海域を制限していきます。ただし造船所の構外でも沖修理や出張工事の修理を行うような場所を包括的に航路定限内に含めることは可能です。