はじめに
雇用慣行賠償責任保険は会社や役員などが従業員からセクハラ・パワハラ・差別・不当解雇などを理由として損害賠償責任を追求されたときの賠償金を補償していきます。
経営者の方も会社や従業員を成長させていこう・良くしていこうと努力をされます。ただ彼らも忙しい・部下の小さなミスや同僚の些細な意見の食い違いや相性の悪さなどが理由でつい言葉が出てしまう場合があります。そのようなところに雇用慣行賠償責任保険の意義があります。
意義
最近は雇用環境が多様化しています。正社員・派遣社員・契約社員・パート・アルバイト・新卒・中途・男性・女性・交代制勤務・夜勤など働く従業員の待遇も様々です。また業種によってはサービス残業の横行も問題になっています。人間同士の相性の問題や勤務上の様々なストレスなどもあってセクハラ・パワハラ・モラハラなどのハラスメントを受けてしまうなどの問題もあります。
従業員の大袈裟な申告などもありますので会社や役員にとっては戦々恐々というところもあります。このような時に役割を発揮するのが雇用慣行賠償責任保険になります。
責任対象
雇用慣行賠償責任保険の責任対象の範囲は不当行為になります。そのような行為によって従業員を守るべき会社側が責任を果たしていない。または従業員に肉体的・精神的に追い込んでいるような場合を指します。
該当する内容としてはハラスメント・不当解雇・差別行為・人権侵害・不当評価・説明義務違反・その他などになります。
ハラスメントはセクハラ・パワハラ・モラハラ・マタハラなどの従業員の就業環境を阻害する行為が該当します。
不当解雇は一方的な退職勧告・契約の一方的な終了・就業規則に反する解雇などが該当します。
差別行為は年齢・性別・国籍・宗教・身分を理由として雇用や労働条件などに差をつけるなどの行為が該当します。
人権侵害は誹謗中傷・言われなき言動・名誉棄損・プライバシーの侵害などの行為が該当します。
不当評価は不当な昇進の見送り・降格・不採用・職種変更・配置転換・異動などの行為が該当します。
説明義務違反は労働条件などの説明を求められた時に適切な回答を行わないなどの行為が該当します。
その他としては従業員の過大申告などの行為が該当します。
保護対象
雇用慣行賠償責任保険の保護対象は正社員だけではありません。契約社員・派遣社員・パート・アルバイト・期間社員・さらには入社応募者までが対象になります。また加害対象も役員や管理職などの上層部の方だけでなく一般社員やパート・アルバイトの方にも及びます。若手社員が学生アルバイトに対しての言動も対象になります。
あらゆる産業が対象
雇用慣行賠償責任保険が適用される業界は製造業・建設業・サービス業・飲食業・小売業・医療業・介護業・レジャー産業・メディア産業・人材派遣紹介業・化学及び薬品関連・IT・自治体などほとんどすべての業種が対象になります。
保険金の種類
雇用慣行賠償責任保険で補償される保険金は、損害賠償責任を求められた時に支払う賠償金や和解金などの損害賠償費用・調停や和解で必要な弁護士費用・報酬金・印紙代や調査費用などの争訟費用などが該当します。さらに労働組合から不当労働行為などで弁護士や社労士などに相談があった場合も含まれます。
また雇用慣行賠償責任保険の保険金と保険料は賠償金限度4000万円程度に対して年間の保険料20万円程度が相場になっています。
どのような職場で起きやすいのか
ハラスメントが起きやすい職場は残業が多い・休みが少ない・休憩時間が少ない・様々な世代や地位の方が働いている・ミスを許さない・社員同士のコミュニケーションが少ないなどの会社が多いです。こうしてみていくと小売・飲食・警備・建設・サービス・介護・医療業界・倉庫管理などの現場ではハラスメントが起きやすい状況になっています。
このような業界の会社は加入の是非を考えても良さそうです。ただお客様や第三者に対する保険に優先をして加入をしてしまうことが多くそこまで余裕が回らないという実態も多くあります。
雇用慣行賠償責任保険への加入をすることは望ましいのですが、実際には重要度はそこまで高くありません。できることであれば経営者と従業員、上司と部下、正社員とパートアルバイトなどがそれぞれでしっかりとコミュニケーションを取ってお互いの誤解を少なくしていくことは可能といえます。
大人の人間関係の多くはストレスとお互いの誤解からくることが多くなっています。なるだけハラスメントという行為になる前にお互いがしっかりと話し合うことです。もしくは被害者側の方が会社を退職して他社に行くこともありなのではと思っています。多くの会社は人手不足です。ハラスメントが出るということは人間関係もしくは会社自体の組織がうまく行っていない可能性が高いです。そのような会社にしがみつく必要もないのかなというのが個人的な意見としてあります。