運送業者貨物賠償責任保険のメリットとリスク

はじめに

運送業者貨物賠償責任保険は運送業者の方が預かった荷物を運送中の事故などで荷物に損害を与えてしまった場合などに適用されます。陸上運送保険ともいいます。

もらい事故などのように自身の運転に大きな問題がない場合にも賠償の責任が出てきます。天災事変などの場合は免責されそうですが大半の事故の時は賠償責任を行う必要が出てきます。預かっている荷物が高価な場合もあると会社としての大変な負担額になることもあります。

ただどのような事故の時に補償がされるのか・またどの荷物に適用されるのかなどの点で難しいところもあります。

補償範囲

運送業者貨物賠償責任保険でカバーされる荷物の補償範囲は2通りあります。保険料や補償内容が異なりますのでどちらかを選ぶ必要があります。

1つ目は天災事変などによる事象・故意や重過失による事故などを除いてほとんどすべての場合をカバーしていくタイプがあります。雨などで濡れてしまった・温度管理を誤ったなどの比較的軽度なミスで起こった場合にも適用されます。補償の範囲が広い分だけ保険料も割高になります。

2つ目は運送業務に伴う典型的な事故のみに適用されます。運送中の衝突事故や保管中の火災や盗難などによって起こった場合に限られます。運送中による事故はだいたい交通事故です。管理ミスなどで商品が使えなくなってしまうケースもあることはあります。ただあまり考えられません。保険料も低めになっているのでこちらが一般的かなといえます。

金品類

金銭・宝石などの貴金属・骨董品・美術品などの高価なものに対しては1梱包あたり最大10万円までになります。一見すると補償が少ないように感じます。ただこのような高価な商品を運送業者に任せて運搬させるということはかなり酷なことです。事故が起こるかもしれません。荷物が運送中に傷がつくかもしれません。このような場合にまで運送業者に責任を負わせていいのかという問題があります。よって最大でも10万円という補償範囲に留まります。

補償費用

運送業者貨物賠償責任保険の補償の費用はお客様への商品の弁償費用が基本になります。ただ保険会社は契約で支払いの限度額を決めることができます。ここまでは自己負担というところでの「免責金額」というものになります。支払いの限度額を低くする・免責金額を高くすると保険料は安くなります。

特約

運送業者貨物賠償責任保険にも特約でカバーできる範囲が広がります。預かった荷物を壊してしまった弁償費用が基本になりますがそれだけではありません。

まずは運転中の事故でお客様の荷物を壊してしまった。それだけでなく荷物を道路に散乱させてしまった。その際の片付け費用なども「残存物取片付け費用特約」で補償します。

次に荷下ろし中などに通行人と接触をしてしまい荷物を壊してしまった・けがをさせてしまった・通行人の自転車を傷つけてしまったなどの時も「第三者賠償責任担保特約」で補償をしていきます。

あとはトラックが接触事故を起こしてしまった運転ができなくなってしまった場合には代車を手配する必要があります。その場合は「継搬費用特約」で補償をしていきます。

その他としては軽度な物損事故とかであれば荷物に損害が出るとは限りません。ただそれでも荷物の梱包を解いて中を確認する必要があります。「検査費用特約」で補償をしていきます。

契約形式

運送業者貨物賠償責任保険の契約形式は事業全体をカバーしていく契約とトラック1台ごとにカバーをしていく契約とがあります。それぞれにメリットとデメリットがあります。

事業全体をカバーしていく契約は前年度の運送会社の売上高を基準に保険料を算定していきます。契約は比較的容易にできます。ただ過去の事故歴などの会社にとって不利な情報も保険会社に知られることになります。直近に大きな事故を起こすと保険料がかなり高くなる可能性が高くなりますので注意が必要です。

一方トラック1台ごとにカバーをしていく契約の場合はトラックの稼働状況ごとに細やかな算定されます。1台ごとに計算をしていくので事務処理は面倒になります。ただトラック1台ごとに保険料が計算されますので何台かが軽度な事故を起こしても保険料を抑えられる可能性があります。ただ1台でも大きな事故を起こしてしまうと保険料が高くなってしまう可能性もあります。

契約をどうするか

運送業者貨物賠償責任保険はどの範囲までを補償してもらうか・免責金額と自己負担額をどこまでにするか・どの特約をつけるか・契約を会社ごともしくはトラックごとにするかなどの選択が重要になります。ただ運送業者の方がその選択をすると判断に誤りが出ることもあります。仕事内容などによっても組み合わせが異なることがありますので一度保険に精通をしている専門家の方に相談をしてみることをお勧めします。運送業者の方は加入の是非を考えてみても良いのではないでしょうか。