会社役員賠償責任保険のメリットと注意点

はじめに

会社役員賠償責任保険は会社の役員が行うべき責務を怠ったとして会社・株主・取引先などの第三者の方から損害賠償を請求された時に補償を行う保険です。D&O保険とも呼ばれています。

会社役員賠償責任保険は大企業だけの問題ではなく中小企業の役員の方にとっても重要な保険になります。会社役員の方は会社の日々の営業を行う上で大きな責任を伴います。会社に損失を与えない・業績を伸ばしていく・私的財産を使わないなどの役割が重要になります。役員が複数人いるときはお互いに監視をしあう義務もあります。

どのような責任を負うか

会社役員賠償責任保険の責任範囲は会社に対する責任・取引先や株主に対する責任などがあります。役員には社長ほどではないにしても会社を守っていく責任があるので守るべきことが多くなります。

会社に対する責任

会社に対する責任は善管注意義務・競業避止義務・利益相反取引回避義務・監視監督義務などがあります。

善管注意義務では取締役として相当な注意をして任務を遂行していく義務があります。

競業避止義務では取締役会の承認なしに会社の業種と同じ仕事を役員個人で行ってはいけません。

利益相反取引回避義務では取締役会の承認なしに役員自身が会社に物を販売する、または役員自身の債務の保証人を会社にしてはいけないなどの義務があります。

監視監督義務では他の取締役が社内の法令や定款に沿って仕事を行っているのかを監視していく必要があります。

取引先や株主に対する責任

取引先や株主に対する責任では民法上の不法行為責任・会社法上の特別責任があります。

民法上の不法行為責任では取締役自身が故意または過失と損害との因果関係を明確に証明ができないと損害賠償の対象になります。このような過失によって損害が起こってしまったということを明らかにしていく必要があります。

会社法上の特別責任では株主や取引先などの第三者の方が取締役に故意または過失があると判断をしたときに、その行為と取締役の義務違反との因果関係を証明することで損害賠償の請求対象になるということです。

具体例

中小企業の役員の方が取引先に欠陥商品を販売してしまったなどの理由で損害賠償を請求される可能性があります。このような場合には会社役員賠償責任保険の対象になります。

また役員が経営の判断を間違えてしまったことで会社に損害が及んでしまった時などにも株主や取引先の方からの損害賠償の対象になることもあります。ただ近年は従来型の業務だけを行っていても業績が伸びていかないということもあります。取締役の積極的な経営判断を行ったことの結果が逆に行くことで賠償責任を負わなければならないという点に関しては酷なところもあります。

また会社役員賠償責任保険は会社が費用負担をすることで損金算入にすることができます。

目的

会社役員賠償責任保険の本来の目的は役員の方が会社や第三者の方から賠償責任を求められた時の補償になります。保険未加入の状況で請求をされてしまうと会社が費用負担をしない場合もあります。そうなると役員個人の報酬から払うことになります。また訴訟費用などに関しても敗訴になると払う必要がありますので大きな額の損害賠償をすることになります。保険の加入によってその負担をカバーすることができます。

また請求時期は損害の発生の10年後までとなります。たとえその後に役員を退任した場合でも責任を逃れることはできませんので注意が必要です。また日本国内だけではなく世界中で発生した損害にも賠償を負うことになります。海外展開を行う企業が多くなったということもあって地域的な適用範囲が広がりました。

補償内容

会社役員賠償責任保険の補償内容は法律上の損害賠償・争訟費用・その他特約で補償される範囲になります。

法律上の損害賠償では法律上での損害賠償責任を求められた時に支払う賠償金や和解金のことをいいます。裁判で敗訴した場合だけではなく和解や調停さらには示談の場合でも損害賠償の範囲に含まれる倍があります。和解や示談での損害賠償の適用範囲によっては各保険会社によって基準が異なります。

争訟費用は着手金や調査費さらには結果によっての報酬金などの弁護士費用も含まれます。ただ裁判などで使う資料を作るための時間に対しての給料や報酬までは保険の対象になりません。

特約で補償される保険金には会社や役員自身が損害賠償金を建て替えた場合・会社で内部調査を行った費用・コンサル会社に会社の立て直しを諮ってもらった場合などにもこの保険の補償範囲になります。

損金扱いになる

会社役員賠償責任保険の保険料を会社で負担した場合には全額損金対象になります。会社にとって大事な役員を守るための保険になりますので全額損金対象の保険になっています。国税庁もこの保険に対して会社が費用負担をしても課税はしないとのことです。役員という会社にとって重要な地位の方を守るための保険でもあるところから会社費用で全額損金にしても構わないという方向で結論が出ました。

その他

会社役員賠償責任保険の適用範囲は会社役員だけではなく執行役員・会計監査役・会計参与の方にも及びます。このような方も会社を守るという重要な役目を担っているということで損害賠償を請求される対象に含まれています。

例えば取締役が会社の業務の目的外のところに会社の財産を使用したことによって会社が損害を受けたと株主から賠償責任を受けることもあります。これを監査役が知っていたもしくは知り得る状況で取締役の行為を見逃したなどの場合にも適用される可能性があるということです。このような場合にも保険の対象範囲でカバーをしていくことになります。

まとめ

会社役員賠償責任保険は責任ある地位の会社役員の方を守るための保険

会社に対する責任は善管注意義務・競業避止義務・利益相反取引回避義務・監視監督義務など

取引先や株主に対する責任では民法上の不法行為責任・会社法上の特別責任など

役員の故意または過失によって会社に損害が起きた時に株主や取引先などの第三者の方が請求できる

法律上の損害賠償だけではなく訴訟費用・争訟費用・特約に含まれる費用も含まれる

会社が費用負担をすることで全額損金の対象になる。