はじめに
船主責任保険とは船舶の航行中に事故が起こって他の船舶や人に損害を与えてしまった場合に船舶の保有者が負うべき賠償責任の費用をカバーしていきます。船舶の航行中に他の船に衝突をしてしまって相手の船舶や人に対して損害を与えてしまう可能性があります。また積んでいる荷物に損害が及ぶ可能性があります。そのような時に備えるための保険となっています。
対象
船主責任保険の対象は船舶の航行中に関わる事故の多くを補償していきます。以下で紹介をしていきます。
1:船舶同士が衝突をしてしまった時には自動車事故と同様に人身傷害での死亡や負傷・損害を受けたしまった船舶の撤去・海に撒かれた油の処理費用・相手の船や積み荷に対する損害
2:進路妨害による船の損害・ローディングアーム損傷・岸壁損傷・ブイの損傷・橋脚損傷・海中ケーブル損傷・定置網損傷・養殖施設損傷・流し網損傷などの船舶以外のモノに対する損害
3:乗組員の負傷死亡事故・所持品損害・代人派遣費用・失業手当・帰路費用・不帰船の費用など
4:座礁をしてしまった場合は原状回復に要した費用
5:衝突などでなどで油漏れが起きた場合にはその処理費用
6:運航中の船の荷物を損傷させてしまった場合の費用
衝突事故の場合の基本の船自身の費用・船の荷物の費用だけでなく沿岸の施設・周辺の海の生態などの回復費用などの対象になります。
保険料
船主責任保険の保険料は日本国内を航行する内航船と海外に出る外航船で費用が異なります。
内航船の場合は甲乙丙の3つの契約の種類があります。
甲契約は「船員の死傷等に関する労働協約等に基づく責任」を含む一般的な契約です。
乙契約は甲から「船員の死傷等に関する労働協約等に基づく責任」を除外する契約になります。工事作業船および輸送艀は乙契約のみになります。
丙契約は工事作業船および輸送艀の乙契約に「船員の死傷等に関する労働協約等に基づく責任」を付帯するための契約になります。
外航船の場合には前払保険料と追加保険料があります。
前払保険料は保険年度内に支払いをする保険料のことをいいます。
追加保険料は保険年度の終了後に外航船の保険全体の保険成績を加味した上で請求していく保険料です。外航船全体の運航成績で追加の保険料を請求するかを決定します。
保険金額
船主責任保険の受取保険金も内航船と外航船で異なります。
内航船の保険料は船の種類と重量で判断します。1億円・1億5000万円・2億5000万円・10億円・20億円・50億円・80億円・90億円・100億円・110億円から選ぶことができます。船の責任限度額をカバーできるような保険金額の設定をすることが望ましいです。当然受取保険料が高くなればそれだけ保険料も高くなります。
外航船の場合は油濁の場合は10億ドル・船客では20億ドル・船客と船員の場合は30億ドルを限度にします。理論上の上限は83億ドルになります。1兆円近くなることもあるということですね。
加入義務
また外航船は船主責任保険の加入が義務付けられています。基本的には船の総重量が100トン以上の船が対象になります。
国際航海を行う日本の船舶及び日本の港に入港をしていく外国の船舶が対象になります。
費用対象は衝突をした場合の船体の除去費用と油の汚染除去費用になります。
まとめ
船を航行する際には沈没・転覆・座礁・火災・衝突などが考えられます。このような時に自船だけでなく他船や積んでいる荷物などにも損害を与えてしまう場合があります。船舶事故は賠償の範囲が広く損害額もとても高くなりますので船舶責任保険の意義が大きくなります。ぜひ1度加入を考えてみても良いのかなという気がします。